やっと見つかったという喜びでいっぱいです。
砂糖不使用のドライフルーツは食物繊維が多いことを当社新着情報でも何回かお話してきました。食物繊維が体にどのような影響を及ぼすかについては、一般的には便通改善や乳酸菌のエサになるなどの腸活ということでまとめてきました。
今回は、日本人を対象とした大規模な調査を実施しそれをまとめた、食物繊維の摂取量と死亡リスクについての論文をご紹介します。
引用論文:Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality
掲載:The American Journal of CLINICAL NUTRITION
https://academic.oup.com/ajcn/article/111/5/1027/5716885
要約しますと、
食物繊維摂取と非伝染性の病気との間には逆相関が見られましたが、アジア系の人々についてはその効果について不明瞭であったので、日本人について大規模な調査を行いました。
調査内容は、日本人の食物繊維摂取量と全ての及び特定の死亡原因の関係と、食事から摂取する食物繊維と全ての死亡原因の関係について調査しました。
※死亡の原因
・ガン(Cancer)
・循環器疾患(Cardiovascular Disease)
・心臓病(Heart Disease)
・脳血管疾患(Cerebrovascular Disease)
・呼吸器疾患(Respiratory Disease)
・けが(Injury)
調査方法は、大規模なコホート研究(多目的コホート研究 JPHC研究)という方法です。
138種類の食べ物についてのアンケートが、45歳から74歳までの男性42,754人と女性50,170人の合計92,924人に実施され、食物繊維摂取量は5グループ(五分位)に分けて計算されました。
各グループについて、全ての死亡原因と特定の死亡原因の死亡率(HR:Hazard Ratio 簡単に言うと、ある期間における、対象グループを基準となるグループで割った数値という感じです)と95%信頼区間(95%
CI)で食物繊維摂取量との関係を示しています。
平均16.8年の追跡期間に、19,400人の死亡を確認した結果、
a)多変量補正モデルでは、すべての水溶性、不溶性食物繊維の摂取量は、全ての死亡要因の死亡率に逆の関係でした(摂取量が多いと死亡率が下がる)。食物繊維の総摂取量の最低グループ(五分位Q1)と最高グループ(五分位Q5)を比較した全ての死亡の割合は、男性で0.77(95%信頼区間 0.72、0.82)、女性で0.82(95%信頼区間 0.76、0.89)でした。(表1参照)
b)食物繊維摂取量の多いグループ(五分位Q5)は、男女ともに循環器疾患、呼吸器疾患、けがによる死亡の減少に大きく関係していました。一方で、食物繊維摂取量は、男性ではガンの死亡率に逆の関係がありましたが、女性にはありませんでした。
c)果物、豆類、野菜由来の食物繊維摂取量はすべての死亡率と逆の関係にありました。しかし、穀類由来の食物繊維摂取量と死亡率との関係性に顕著な傾向は見られませんでした。
※当研究では、
豆類には、豆腐、味噌、豆乳を含んでいる。
穀物には、米、大麦、パン、うどん、そば、中華麺、餅を含んでいる。
結論として、
この長期間の追跡による大規模な研究において、食物繊維は全ての死亡率に逆の関係がありました。主に果物、野菜、豆類からの食物繊維の摂取量の増加により、全ての死亡率が低くなる関係があったことから、今よりも多くの食物繊維を摂取することを目標とする人たちにとって、これらの食料(源)は良い選択肢になるかもしれません。
という内容でした。
コロナ禍の現在、感染した場合に肥満体であるほど重症化する傾向があるため、英国では糖質や脂質などを含む食品の広告を規制するという報道がありました。
ドライフルーツは乾燥することで栄養成分が凝縮されるため糖質の量は多くなりますが、同様に食物繊維やミネラルも凝縮されるので他の糖質を含む食品に比べて多いのも特徴です。
そうした観点から糖質量のみに着目して摂取を控えるのではなく、今回ご紹介した論文の結論にあるように、食物繊維の健康増進への有用性の面も捉えてバランスの良い食品の摂取が重要であると考えます。
日本人女性の食物繊維目標摂取量は18g(18歳~64歳)、男性は21gですが、実際の摂取量は女性で12~14g、男性で13~16g(若い人ほど少ない)程度です。
コロナ禍の現在こそ、もう少し意識して食物繊維をとってみては如何でしょうか?
表1:食物繊維摂取量(項目は一部を抜粋)とHR
性別 |
項目 |
Q1 |
Q2 |
Q3 |
Q4 |
Q5 |
調査人数 |
10,034 |
10,034 |
10,034 |
10,034 |
10,034 |
|
BMI |
23.5 |
23.4 |
23.4 |
23.5 |
23.6 |
|
糖尿病患者 % |
2.7 |
3.2 |
3.0 |
3.9 |
5.2 |
|
高血圧薬服用者 % |
17.1 |
17.9 |
19.4 |
20.8 |
22.0 |
|
摂取カロリー/日 |
1765 |
1759 |
1773 |
1798 |
1783 |
|
1日1回以上コーヒーを飲む人 % |
40.8 |
39.7 |
36.9 |
32.4 |
27.1 |
|
1日1回以上緑茶を飲む人 % |
46.3 |
56.0 |
61.6 |
65.0 |
67.2 |
|
総食物繊維摂取量 g |
9.2 |
11.8 |
13.7 |
16.0 |
19.7 |
|
水溶性食物繊維摂取量 |
2.8 |
3.5 |
4.0 |
4.6 |
5.6 |
|
不溶性食物繊維摂取量 |
6.9 |
8.7 |
10.0 |
11.5 |
14.0 |
|
HR |
1.00 |
0.92 |
0.91 |
0.85 |
0.82 |
|
95% CI |
|
0.86 1.00 |
0.85 0.98 |
0.79 0.92 |
0.76 0.89 |
|
総食物繊維摂取量 |
≦10.6 |
10.6-12.7 |
12.7-14.7 |
14.7-17.4 |
≧17.4 |
|
男 |
調査人数 |
8,551 |
8,550 |
8,552 |
8,550 |
8,551 |
BMI |
23.6 |
23.6 |
23.6 |
23.6 |
23.6 |
|
糖尿病患者 % |
5.5 |
5.9 |
6.1 |
8.0 |
9.6 |
|
高血圧薬服用者 % |
15.5 |
16.8 |
18.3 |
19.6 |
21.0 |
|
摂取カロリー/日 |
2091 |
2072 |
2072 |
2088 |
2086 |
|
1日1回以上コーヒー摂取する人 % |
32.4 |
34.7 |
33.7 |
32.0 |
28.4 |
|
1日1回以上緑茶を飲む人 % |
42.1 |
52.0 |
56.5 |
61.2 |
65.8 |
|
総食物繊維摂取量 g |
7.4 |
9.9 |
11.9 |
14.1 |
18.2 |
|
水溶性食物繊維摂取量 |
2.3 |
3.0 |
3.5 |
4.1 |
5.2 |
|
不溶性食物繊維摂取量 |
5.7 |
7.4 |
8.8 |
10.0 |
13.0 |
|
HR |
1.00 |
0.87 |
0.88 |
0.80 |
0.77 |
|
95% CI |
|
0.82 0.93 |
0.82 0.93 |
0.75 0.86 |
0.72 0.82 |
|
総食物繊維摂取量 |
≦8.7 |
8.8-10.8 |
10.8-12.9 |
12.9-15.7 |
≧15.7 |
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