【日本人の栄養過不足(最新版)】2020.04.14
厚生労働省の食事摂取基準(5年毎)が今年2020 年に改定されました。
摂取基準量の増減で顕著なのが、ビタミンD(前回の1.5 倍以上増加)とナトリウム(食塩相当量で 0.5g 減→約6~7%)でした。
食塩相当量が成人男性で7.5g /日、成人女性で 6.5g /日未満が目標量ですが、病院の食事(その当時は、8~9g/日)を経験した従業員によると、全体的に薄味となり、
量がないと満足感が得られないようです。それでも、高血圧性疾患の患者数が増加(患者数は、男性よりも女性のほうが多い)
していることから、予防するためには仕方ないのかもし れません。
摂取量不足の栄養素は前回と変わらずですが、その「量」については、年齢によっては、かなり不足しているものがあります。
炭水化物の不足は、スタイルを過度に気にした糖質制限の影響があると思われます。35歳~89歳を対象とした欧米諸国で実施された57のコホート研究(総対象者数894,576人)のデータを用いて追跡開始時のBMIとその後の総死亡率との関連についてまとめたメタ・アナリシスによると、年齢調整後で、男女ともBMI22.5~25.0(kg/㎡)の群で最も低い総死亡率を認めたとあります。ただし、体重管理はBMIだけを管理する意味は乏しく、その他の要因(環境、遺伝など)や身体活動(運動)も関係することから、一つの要素として扱うべきとも書かれております。
食物繊維摂取量と生活習慣病の発症率又は死亡率の研究では、20g/日以上摂取した場合に発症率の低下が観察されており、ヨーロッパで行われた研究では、食物繊維摂取量と体重増加の間に負の関連が観察されたとのことです。アメリカ・カナダの摂取基準を参考にすると、成人では24g/以上が望ましいところですが、実現性の問題から日本では目標量(以上)として女性18g(20歳~69歳)、男性21g(20歳~69歳)としたようです。
日本人の摂取量(平成28年11月調査)に対する摂取基準量の過不足については、表2をご覧ください。※摂取基準と摂取量の対象年齢層が合わないことから、60歳以上は割愛しました。
日本人の食事摂取基準(2020年版) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
国民健康・栄養調査結果(平成30年) https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000615383.pdf
栄養素 | 女性 | 男性 |
炭水化物 | 10~15% | 10~20% |
食物繊維 | 20~30% | 30~40% |
ビタミンA | 20~40% | 40~50% |
ビタミンD | 20~40% | 15~35% |
ビタミンB1 | 20~25% | 20~30% |
ビタミンB2 | 5~20% | 15~30% |
ビタミンB6 | 10% | 10~15% |
ビタミンC | 10~30% | 15~30% |
カリウム | 10~30% | 20~30% |
カルシウム | 20~40% | 40% |
マグネシウム | 10~20% | 20~30% |
鉄 | 30~40% | - |
亜鉛 | 5% | 10~20% |
表2:食事摂取基準(身体活動レベルⅡ※1)に対する、栄養摂取量の過不足
上段:過不足量 下段:過不足の割合
栄養素 | 基準 | 単位 | 女性 | 男性 | ||||||
20-29歳 | 30-39歳 | 40-49歳 | 50-59歳 | 20-29歳 | 30-39歳 | 40-49際 | 50-59歳 | |||
推定エネルギー | 必要量 | Kcal | -357 -17.9% |
-293 -14.3% |
-336 -16.4% |
-211 -10.8% |
-420 -15.8% |
-500 -18.5% |
-559 -20.7% |
-351 -13.5% |
たんぱく質 | 推奨量 | g | 11.5 23.0% |
14.3 28.6% |
13.6 27.2% |
16.6 33.2% |
13.2 20.% |
12.4 19.1% |
10.9 16.8% |
15.5 23.8% |
脂質 | 目標量 | g | 12.3 27.7% |
14.7 32.2% |
12.7 27.9% |
15.2 35.1% |
16.1 27.3% |
9.4 15.7% |
8.7 14.5% |
13.2 22.8% |
炭水化物 | 目標量 (下限) |
g | -37.5 -15.0% |
-28.1 -11.0% |
-35.5 -13.9% |
-20.1 -8.2% |
-38.6 -11.7 |
-48.4 -14.3% |
-63.4 -18.8% |
-45.2 -13.9% |
飽和脂肪酸 | 目標量 (以下) |
g | 1.72 11.0% |
2.52 15.8% |
1.49 9.4% |
1.93 12.7% |
1.94 9.4% |
-0.95 -4.5% |
-1.22 -5.8% |
-0.21 -10.% |
n-6系脂肪酸 | 目安量 | g | 1.33 16.6% |
2.22 27.8% |
2.17 27.1% |
2.32 29.0% |
1.47 13.4% |
2.04 20.4% |
2.14 21.4% |
2.71 27.1% |
n-3系脂肪酸 | 目安量 | g | 0.16 10.0% |
0.49 30.6% |
0.46 28.8% |
0.45 23.7% |
0.32 16.0% |
0.53 26.5% |
0.58 29.0% |
0.56 25.5% |
食物繊維 | 目標量 (以上) |
g | -6.1 -33.9% |
-5.2 -28.9% |
-5.4 -30.0% |
-4.0 -22.2% |
-8.1 -38.6% |
-7.4 -35.2% |
-7.3 -34.8% |
-6.6 -31.4% |
ビタミンA | 推奨量 | μgRAE | -236 -36.3% |
-231 -33.0% |
-292 -41.7% |
-169 -24.1% |
-368 -43.3% |
-383 -42.6% |
-461 -51.2% |
-414 -46.0% |
ビタミンD | 目安量 | μg | -3.3 -38.8% |
-2.9 -34.1% |
-3.7 -43.5% |
-2.0 -23.5% |
-3.0 -35.3% |
-2.7 -31.8% |
-2.3 -27.1% |
-1.5 -17.6% |
ビタミンE | 目安量 | mg | 0.5 10.0% |
1.1 20.0% |
0.5 9.1% |
0.8 13.3% |
0.6 10.0% |
0.8 13.3% |
0.8 13.3% |
0.2 2.9% |
ビタミンK | 目安量 | μg | 55 36.7% |
79 52.7% |
74 49.3% |
84 56.0% |
68 45.3% |
95 63.3% |
96 64.0% |
93 62.0% |
ビタミンB1 | 推奨量 | mg | -0.27 -24.5% |
-0.25 -22.7% |
-0.27 -24.5% |
-0.26 -23.6% |
-0.32 -22.9% |
-0.39 -27.9% |
-0.43 -30.7% |
-0.27 -20.8% |
ビタミンB2 | 推奨量 | mg | -0.24 -20.0% |
-0.17 -14.2% |
-0.16 -13.3% |
-0.08 -6.7% |
-0.41 -25.6% |
-0.44 -27.5% |
-0.49 -30.6% |
-0.26 -17.3% |
ナイアシン | 推奨量 | mgNE | 14.5 131.8% |
15.0 125.0% |
15.0 125.0% |
17.8 161.8% |
17.6 117.3% |
18.4 122.7% |
17.6 117.3% |
21.5 153.6% |
ビタミンB6 | 推奨量 | mg | -0.14 -12.7% |
-0.10 -9.1% |
-0.12 -10.9% |
-0.01 -0.9% |
-0.18 -12.9% |
-0.22 -15.% |
-0.25 -17.9% |
-0.10 -7.1% |
ビタミンB12 | 推奨量 | mg | 1.8 75.0% |
2.5 104.2% |
1.8 75.0% |
3.3 137.5% |
2.5 104.2% |
3.5 145.8% |
3.5 145.8% |
3.7 154.2% |
葉酸 | 推奨量 | μg | -4 -1.7% |
9 3.8% |
6 2.5% |
52 21.7% |
16 6.7% |
25 10.4% |
23 9.6% |
57 23.8% |
パントテン酸 | 目安量 | mg | -0.27 -5.4% |
0.04 0.8% |
-0.05 -1.0% |
0.22 4.4% |
0.86 17.2% |
0.84 16.8% |
0.53 10.6% |
0.04 0.7% |
ビタミンC | 推奨量 | mg | -29 -29.0% |
-24 -24.0% |
-28 -28.0% |
-7 -7.0% |
-25 -25.0% |
-30 -30.0% |
-27 -27.0% |
-16 -16.0% |
カリウム | 目標量 (以上) |
mg | -770 -29.6% |
-577 -22.2% |
-604 -23.2% |
-340 -13.1% |
-840 -28.0% |
-803 -26.8% |
-837 -27.9% |
-627 -20.9% |
カルシウム | 推奨量 | mg | -266 -40.9% |
-209 -32.2% |
-209 -32.2% |
-161 -24.8% |
-348 -43.5% |
-312 -41.6% |
-317 -42.3% |
-282 -37.6% |
マグネシウム | 推奨量 | mg | -64 -23.7% |
-60 -20.7% |
-56 -19.3% |
-34 -11.7% |
-88 -25.9% |
-112 -30.3% |
-111 -30.0% |
-81 -21.9% |
リン | 目安量 | mg | 24 3.0% |
94 11.8% |
84 10.5% |
151 18.9% |
33 3.3% |
25 2.5% |
3 0.3% |
76 7.6% |
鉄(月経あり) | 推奨量 | mg | -4.0 -38.1% |
-3.7 -35.2% |
-3.7 -35.2% |
-3.7 -33.6% |
0.1 1.3% |
0.0 0.0% |
0.0 0.0% |
0.6 8.0% |
亜鉛 | 推奨量 | mg | -0.5 6.3% |
-0.3 -3.8% |
-0.5 -6.3% |
-0.4 -5.0% |
-1.2 -10.9% |
-1.6 -14.5% |
-2.0 -18.2% |
-1.5 -13.6% |
銅 | 推奨量 | mg | 0.25 35.7% |
0.33 47.1% |
0.29 41.4% |
0.36 51.4% |
0.28 31.1% |
0.29 32.3% |
0.27 30.0% |
0.32 35.6% |
食塩相当量 | 目標量 (未満) |
g | 2.3 35.4% |
2.6 40.0% |
2.2 33.8% |
2.9 44.6% |
3.3 44.0% |
3.3 44.0% |
3.2 42.7% |
3.5 46.7% |
*1 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客、あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツ等の何れかを含む場合。
砂糖を使わないドライフルーツの共通する特筆すべき栄養素は3つです。
- 炭水化物
carbohydrate - 食物繊維
Dietary fiber - カリウム
potassium
キングソロモンデーツJUNIOR36g(3粒)で 炭水化物 28.8g 食物繊維 2.7g カリウム 277mg マグネシウム 19mg |
アンジェリーノプラム27g(個体差あり)で 炭水化物 18.0g 食物繊維 2.0g カリウム 211mg |
きっちりファイバーパイナップルコア15gで 炭水化物 12.6g 食物繊維 3.1g カリウム 119mg |
アプリコットブレンハイム20gで 炭水化物 13.0g 食物繊維 1.7g カリウム 240mg ビタミンA 65μg |
<もう少し詳しく>
◆炭水化物
栄養学的な側面からみた炭水化物の最も重要な役割は、エネルギー源である。炭水化物から摂取するエネルギーのうち、食物繊維に由来する部分はごくわずかであり、そのほとんどは糖質に由来する。 糖質は、約4kcal/gのエネルギーを産生し、その栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等、通常はぶどう糖(グルコース)しかエネルギー源として利用できない組織にぶどう糖を供給することである。脳は、体重の2%程度の重量であるが、 総基礎代謝量の約20%を消費すると考えられている。基礎代謝量を1,500kcal/日とすれば、 脳のエネルギー消費量は300kcal/日になり、これはぶどう糖75g/日に相当する。上記のように脳以外の組織もぶどう糖をエネルギー源として利用することから、ぶどう糖の必要量は少なくとも 100g/日と推定され、すなわち、糖質の最低必要量はおよそ100g/日と推定される。しかし、肝臓は、必要に応じて筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生を行い、血中にぶどう糖を供給する。したがって、これは真に必要な最低量を意味するものではない。 我が国の若年女性は、やせの者の割合が高い。国民健康・栄養調査によれば、20歳代女性のやせの者(BMI<18.5)の割合は、1990年代初頭に20%台前半に達し、以降はばらつきがあるものの横ばい傾向である。若年女性の低体重は骨量低下を来しやすく、将来の骨粗鬆症のリスクとなる。また、20歳代以降は、女性も男性と同様に平均BMIが増加し、肥満者(BMI≧ 25)の割合が増加し、やせの者の割合が減少している。平均BMIの増加は、高齢期において死亡率の低いBMIの範囲に移行する望ましい変化の可能性もあるが、やせの体重増加は、サルコペニア肥満を招き、インスリン抵抗性と関連する代謝異常や高齢期のADL低下の原因となる可能性もある。若年女性のやせは、出生コホートの影響や小児から思春期のBMIの増加不良など、より早い年齢からの栄養状況の精査と対応が必要である。また、原因についても更に研究が必要である。
◆食物繊維
食物繊維摂取量は、数多くの生活習慣病の発症率又は死亡率との関連が検討されており、メタ・アナリシスによって数多くの疾患と有意な負の関連が報告されている稀な栄養素である。代表的なものとして、総死亡率、心筋梗塞の発症及び死亡、脳卒中の発症、循環器疾患の発症及び死亡、2型糖尿病の発症、乳がんの発症、胃がんの発症、大腸がんの発症などがある。例えば、食物繊維をほとんど摂取しない場合に比べて、20g/日程度摂取していた群では心筋梗塞の発症率が15%ほど低かったと報告されている。また、メタボリックシンドロームの発症率との関連を検討したメタ・アナリシスも存在する。これらの報告は、総合的には食物繊維摂取量が多いほどこれらの発症率や死亡率が低くなる傾向を認めている。2型糖尿病の発症率との関連を検討したメタ・アナリシスでは、20g/日以上摂取した場合に発症率の低下が観察されており、閾値としてこの値が存在する可能性を示唆している。血中総コレ ステロール及びLDLコレステロールとの負の関連も報告されているが、これは水溶性食物繊維に限られるとされている。また、ヨーロッパで行われた大規模コホート研究では、食物繊維摂取量と体重増加の間に負の関連が観察されている。食物繊維摂取量が排便習慣(健康障害としては便秘症)に影響を与える可能性が示唆されている。食物繊維摂取量と便秘症罹患率との関連を横断的並びに縦断的に検討した疫学研究では、便秘症の罹患率、発症率及び排便頻度と食物繊維摂取量との間に負の関連を認めたとする報告がある。その一方で、両者の間に関連を認めなかった研究も存在する。
目標量の算定に用いられた研究の多くは、通常の食品に由来する食物繊維であり、サプリメント等に由来するものではない。したがって、同じ量の食物繊維を通常の食品に代えてサプリメント等で摂取したときに、ここに記されたものと同等の健康利益を期待できるという保証はない。さらに、食品由来で摂取できる量を超えて大量の食物繊維をサプリメント等によって摂取すれば、ここに記されたよりも多くの(大きな)健康利益が期待できるとする根拠はない。
食物繊維が豊富な食品は、グリセミック・インデックス(glycemic index:GI)が低い傾向に ある。糖尿病患者に低GI食による効果をHbA1c及び空腹時血糖の変化を指標として検証した介 入試験をまとめたメタ・アナリシスは、HbA1c及び空腹時血糖の有意な改善を観察している。 しかしながら、どの程度のGI(値)の食事を勧めるべきかに関する知見はまだ十分ではない。
◆カリウム
カリウムは、細胞内液の主要な陽イオン(K+)であり、体液の浸透圧を決定する重要な因子である。また、酸・塩基平衡を維持する作用がある。神経や筋肉の興奮伝導にも関与している。健康な人において、下痢、多量の発汗、利尿剤の服用の場合以外は、カリウム欠乏を起こすことはまずない。日本人は、ナトリウムの摂取量が諸外国に比べて多いため、ナトリウムの摂取量の低下に加えて、ナトリウムの尿中排泄を促すカリウムの摂取が重要と考えられる。また、近年、カリウム摂取量を増加することによって、血圧低下、脳卒中予防につながることが動物実験や疫学研究によって示唆されている。
◆マグネシウム
血清中のマグネシウム濃度は、1.8〜2.3mg/dLに維持されており、マグネシウムが欠乏すると腎臓からのマグネシウムの再吸収が亢進するとともに、骨からマグネシウムが遊離し利用される他、低マグネシウム血症となる。低マグネシウム血症の症状には、吐き気、嘔吐、眠気、脱力感、筋肉の痙攣、ふるえ、食欲不振がある。また、長期にわたるマグネシウムの不足が、骨粗鬆症、心疾患、糖尿病のような生活習慣病のリスクを上昇させることが示唆されているが、更なる科学的根拠の蓄積が必要である。