【家計調査資料から見える消費トレンド(2015年版)】

過去2年間もご紹介させていただきましたが、総務省の家計調査資料(総世帯)から世帯人数で割った1人当たりの品目別年間支出金額(単位:円)の推移を2015年のデータを加えて改めて調べてみました。

政府の目標であった2%のインフレ目標は計画通りに達成できておらず、未だデフレから脱却しきれていない状況ですが、5年前と比べて伸長している品目と、そうでない品目には時勢を反映した特徴が出ているようです。

特に当社の業態に密接に関わりのある食品関連から抜粋したものを、個人的見解ではありますがご紹介させていただきます。


※(2016.6.14追記)
総務省統計局 家計調査 収支項目分類表(http://www.stat.go.jp/data/kakei/9.htm) にて、下記項目の内容例示を確認いたしました。


319 果物加工品
果物に乾燥、砂糖煮などの処理をしたもの。缶詰、瓶詰も含む。
○ 果物の缶詰・瓶詰
乾燥バナナ 干あんず 干ぶどう 干し柿
× ジャムの缶詰,瓶詰→331
× 果物のチップス→357

279 他の乾物・海藻  
× アーモンド,カシューナッツなどの木の実→319

以上の通り、ドライフルーツ・ナッツ類ともに 果物加工品 に分類されているようです。果物加工品の年間支出金額は下記表の通り年々伸長しておりますので、そこには最近のくるみやアーモンドをはじめとしたナッツブームの影響が大いにありそうです。当社としてはドライフルーツとナッツの数値が一緒になってしまっているのは、各項目のデータがぼやけてしまうのでとても残念ですが、総務省がドライフルーツとナッツを同類で考えて集計しているというのは意外でした。


 
  3月
東日本大震災
12月
新内閣
○○○ミクス

円安・株高
傾向へ
4月
消費税8%
11月
円安進行
  2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 15/11年 比
  世帯人数 2.47 2.45 2.44 2.41 2.38 96.36%
 
 ① 消費支出 1,201,082 1,212,986 1,237,258 1,252,190 1,246,015 103.74%
 
 ② 食料品 310,251 313,751 319,857 328,953 341,448 110.06%
 
 ③ 穀類 26,491 26,819 26,425 26,206 26,352 99.48%
 
  9,104 9,500 9,292 8,379 7,668 84.22%
 
  パン 9,622 9,694 9,641 10,146 10,663 110.82%
 
  カップ麺 1,269 1,238 1,208 1,273 1,414 111.43%
  即席麺 596 625 717 678 667 112.04%
 ④ 魚介類 26,089 25,967 26,345 26,880 27,583 105.73%
肉類 24,450 24,160 25,474 27,593 28,869 118.1%
 ⑤ 乳卵類 13,091 13,548 13,866 14,474 15,171 115.89%
 
  牛乳 5,203 5,183 5,237 5,201 5,393 103.66%
 
  ヨーグルト 2,988 3,536 3,759 3,953 4,334 145.07%
  チーズ 1,370 1,428 1,464 1,593 1,671 121.93%
 
  2,838 2,718 2,741 3,034 3,097 109.14%
 ⑥ 生鮮野菜 21,368 21,517 22,314 23,022 24,507 114.69%
 
  キャベツ 817 845 923 978 1,092 133.78%
  ほうれんそう 684 716 709 738 765 111.83%
  レタス 679 765 836 830 939 138.23%
  ブロッコリー 519 571 588 629 694 133.73%
  たまねぎ 1,013 987 975 1,135 1,177 116.18%
  トマト 2,236 2,463 2,561 2,559 2,777 124.23%
  ピーマン 574 579 612 613 700 122.02%
 ⑦    生鮮果物 11,928 12,240 12,192 12,594 12,963 108.69%
果物加工品 665 745 785 922 1,026 154.19%
 ⑧ 調味料 11,971 11,966 11,954 12,312 12,716 106.22%
 
  食塩 174 169 166 168 171 98.47%
  しょう油 704 666 654 667 656 93.16%
  みそ 806 756 764 764 777 96.33%
  砂糖 479 466 453 441 439 91.76%
  423 397 407 391 325 76.94%
 
  乾燥スープ 926 949 939 1,020 1,083 116.94%
  風味調味料 640 659 669 723 745 116.46%
  つゆ・たれ 1,391 1,369 1,381 1,419 1,523 109.49%
  他の調味料 3,571 3,697 3,684 3,785 3,986 111.62%
 ⑨ 菓子類 26,451 26,875 27,528 28,321 29,317 110.83%
 
  まんじゅう 506 498 497 490 528 104.36%
  他の生和菓子 3,198 3,169 3,251 3,380 3,420 106.95%
 
  ケーキ 2,281 2,235 2,278 2,275 2,340 102.60%
  他の生洋菓子 2,294 2,331 2,430 2,526 2,704 117.91%
 
  せんべい 1,792 1,819 1,866 2,005 2,075 115.76%
  スナック菓子 1,350 1,404 1,415 1,520 1,559 115.49%
 
  チョコレート 1,504 1,593 1,665 1,872 1,998 132.87%
  チョコレート菓子 388 411 427 463 497 127.91%
 
  アイスクリーム・シャーベット 2,490 2,533 2,735 2,688 2,946 118.33%
 ⑩ 調理食品 37,397 38,468 38,719 40,461 42,718 114.23%
 
  弁当 5,839 5,865 5,832 6,033 6,407 109.73%
  おにぎり・その他 1,583 1,611 1,648 1,744 1,925 121.62%
  調理パン 1,502 1,574 1,563 1,774 1,913 127.33%
 
  サラダ 1,296 1,385 1,496 1,611 1,812 139.83%
 
  コロッケ 641 632 639 668 694 108.17%
  天ぷら・フライ 3,108 3,201 3,218 3,476 3,613 116.25%
  ハンバーグ 333 338 351 351 382 114.75%
 
  冷凍調理食品 1,751 1,836 1,892 1,962 2,092 119.45%
 ⑪ 飲料 18,117 18,363 18,650 18,784 19,576 108.05%
 
  緑茶 1,645 1,528 1,580 1,555 1,517 92.26%
  紅茶 292 280 282 261 262 89.82%
  茶飲料 2,294 2,316 2,402 2,402 2,542 110.83%
 
  コーヒー 1,813 1,818 1,859 2,011 2,236 123.35%
  コーヒー飲料 1,719 1,737 1,830 1,915 2,092 121.67%
 
  果実・野菜ジュース 3,129 3,233 3,120 3,060 2,973 95.01%
  炭酸飲料 1,353 1,550 1,645 1,673 1,748 129.18%
 
  乳酸菌飲料 1,154 1,221 1,188 1,219 1,314 113.83%
  乳飲料 489 513 523 550 628 128.46%
 
  ミネラルウォーター 1,264 1,177 1,178 1,134 1,211 95.83%
 ⑫ 酒類 14,809 14,681 14,789 15,288 15,236 102.88%
 
  清酒 2,230 2,136 2,225 2,310 2,208 99.00%
  焼ちゅう 2,455 2,330 2,402 2,434 2,448 99.71%
  ビール 4,677 4,443 4,270 4,341 4,160 88.93%
  ウイスキー 414 541 509 521 699 168.81%
  ワイン 977 1,056 1,175 1,223 1,281 131.14%
  発泡酒・ビール風アルコール飲料 3,027 3,167 3,184 3,317 3,181 105.07%
 ⑬ 外食 63,835 64,765 67,270 68,473 71,078 111.35%
 
  日本そば・うどん 2,045 2,066 2,225 2,240 2,452 119.87%
  中華そば 2,312 2,217 2,430 2,460 2,534 109.60%
  すし(外食) 4,746 4,512 4,964 4,997 5,149 108.48%
  和食 8,377 8,557 8,766 9,259 9,864 117.76%
  中華食 1,631 1,650 1,898 1,889 1,864 114.27%
  洋食 6,060 6,159 6,839 7,230 5,029 82.98%
  ハンバーガー 1,583 1,453 1,462 1,289 1,163 73.49%
  喫茶代 2,087 2,091 2,262 2,318 2,592 124.19%
医薬品 10,099 10,116 10,076 10,042 10,515 104.12%
 
  健康保持用摂取品 5,355 5,756 5,916 5,541 5,889 109.96%
 
  通信 49,953 50,369 50,654 51,912 54,149 108.40%
 
  固定電話通信料 12,472 12,420 12,030 11,426 11,098 88.99%
  移動電話通信料 32,618 33,256 34,057 35,784 38,364 117.62%
  理美容用品 17,670 18,022 18,350 18,181 18,505 104.72%
 
  理美容用電気器具 578 553 585 602 536 92.80%
  他の理美容用品 768 975 831 770 893 116.25%
 
  歯ブラシ 447 469 473 502 535 119.67%
  歯磨き 775 828 871 918 962 124.10%
 
  テレビゲーム機 441 425 392 317 249 56.51%
  ゲームソフト等 627 767 605 607 526 84.00%
 
  ペットフード 2,149 2,147 2,251 2,359 2,560 119.13%
  動物病院代 1,794 1,992 2,000 2,161 2,297 128.05%
 
  レンタカー料金 382 449 398 514 646 169.15%
 
  こづかい(使途不明) 42,319 39,223 38,260 35,868 33,842 79.97%

① 消費支出(全体)
’11年比では103.7%ですが、前年比では99.5%と後退しており、デフレ脱却・景気回復が体感できていないのが数字にも表れているように思います。
表では1人当たりの金額ですが、元となっている世帯当たりのデータでは’13-14年では99.9%、’14-15年では98.3%と2年連続の減少になっていて、なおのこと景気回復が進んでいないことが表れていると感じます。

② 食料品(全体)
‘11年比では110.1%となっており、前年比でも103.8%と伸びています。ただし、2015年は円安の影響もあり、様々な食料品が値上げされた年でもあります。支出の伸びが物価上昇によるもので、家庭での収入が増加していない状況では家計が逼迫するだけです。景気回復が感じられないのも当たり前です。

③ 穀類
特徴的なのは、米が毎年減少傾向にあることです。対してカップ麺・即席麺などはより本格的な美味しさを追求した技術革新が登場している影響からか、順調に伸びています。手間もかからず美味しいのであれば、お米を炊かずに料理を作らない傾向になってしまうのも仕方ないことなのでしょうか・・・

④ 魚介類、肉類
魚と肉を比較すると、やはり魚の消費支出は鈍化しており、肉は堅調な伸びがあります。後述しますが、手軽に味を調えることのできる風味調味料などの支出も伸びていることから、簡易な料理が出来る分、家庭では肉料理の方が好まれるということでしょうか?

⑤ 乳製品
ヨーグルトは昨今の健康志向の流れを反映して堅調な伸びが見て取れます。飲料の分類にある乳酸菌飲料も同様の傾向です。ただし、昔から体に良いとされる牛乳は、健康志向の消費者にとっては選択肢が大幅に増えていますので厳しい状況のようです。

⑥ 生鮮野菜
生鮮野菜についても健康志向の高まりが反映されており、レタス・ブロッコリー・トマトなど定番的にサラダに使用されるものが伸びているようです。ただし生鮮品は天候不順などの影響で相場価格が変動しますので、単純比較は難しいかも知れません。

⑦ 果物
生鮮果物に比べ、果物加工品が毎年伸びています。スーパーなどでもカットされたフルーツが目立ちますので、やはり家庭では手間がかからず食べやすい状態になったものは人気のようです。また、食べきれずに無駄にしない適度な量になっているため、果物を摂りたい単身者のニーズにもマッチしていると思われます。

⑧ 調味料
特徴的なのは 砂糖、塩、酢、醤油、味噌 いわゆる「さしすせそ」の基本調味料の支出金額が減少していることです。やはり家庭では手間のかかる料理は敬遠される傾向にあるようで、基本調味料の支出が減少しているのは、それを如実に表しているように感じます。その分、調味料でも風味調味料や乾燥スープなど手間をかけずに手軽に料理が出来るものが好調であることから、「料理に手間はかけたくない」傾向は見て取れます。

⑨ 菓子
やはり最も伸びているのは、チョコレート、チョコレート菓子です。今となってはチョコレートは子供のお菓子ではなく、健康志向の大人をターゲットにした機能性(カカオポリフェノール)のチョコレートや、カカオ豆からチョコレートを一貫生産する「Bean to Bar」のこだわりのチョコレートなどが登場し、大人の嗜好品の一面が強くなっています。また、同じく伸びているアイスクリームも、廉価なものから高級なものまでコンビニ、スーパーで幅広く手に入り、個々の嗜好・ライフスタイルに合わせた消費動向が見てとれます。

⑩ 調理食品
やはり健康志向を背景としてサラダは好調です。野菜を摂取したいというニーズに、手間のかかる料理はしたくない、使い切れずに無駄にしたくない、個々の嗜好に合わせたものを食べたい、という要素もマッチしていると思います。また、調理パンや冷凍食品といった手間いらずの商品も、料理を作らない傾向から結果年々伸びているようです。

⑪ 飲料
健康志向から乳酸菌飲料、乳飲料は堅調な伸びを見せています。また、コーヒーやコーヒー飲料も、様々な嗜好に合わせた多種多様な製品が発売されていることから伸びているようです。
一方、果実・野菜ジュースが減少傾向にあるのは健康志向の背景を考えると意外でしたが、健康志向の高まりで、逆に選択肢が増えたことによって分散してしまったことが原因でしょうか?これまでは果実・野菜ジュースに頼っていた分が、カットフルーツや、カット野菜で手軽に摂れるようになってしまった背景もあるかと推測します。

⑫ 酒類
顕著な伸びを見せているのはウイスキーです。理由はいわずもがな朝のドラマの影響でしょう。メディアの影響力の大きさを感じるデータです。
また、ワインはまさに嗜好品。個々の嗜好に合った消費動向が強い状況では堅調に伸びています。チーズなどワインに合う食材も、それに引っ張られて嗜好性の高い高付加価値の商品などが影響して伸びているのも納得です。

⑬ 外食
年々減少しているのはハンバーガー。こちらも理由は敢えて言う必要はないかと思いますが、消費者の食品安全に対する興味は同様の事件がメディアに取り上げられる度に年々高まっており、食品に関わる当社としても食品安全に対する姿勢には十分に注意していかなければならないと気が引き締まるばかりです。
また、喫茶代が年々伸びているのも特徴的です。この点に関してはロードサイド型で高価格帯ではあるが、ゆっくりとくつろげる雰囲気があり、幅広い客層に支持されている名古屋発祥のコーヒーショップチェーンの躍進が頭をよぎりました。コーヒー競争もファーストフード、コンビニコーヒー含めて激化していますので、今後も注目かも知れません。

⑭ その他
・健康保持用摂取品▲
 食品以外でも健康への意識は高まる一方です。

・移動通信費▲
 移動電話通信費は年々上昇しており、家計全体に対するシェアも大きくなるばかりです。通信キャリアは様々な値下げ施策を出していますが、それにしても高すぎる気がします。今後は格安SIMがどこまで浸透してくるかが鍵になってきそうですね。

・理美容用品▲
  男女問わず、美の追求とボディケアには余念がない?

・歯ブラシ、歯磨き▲
 歯周病予防で口腔ケア?

・テレビゲーム機、ゲームソフト▼
 通勤電車でもみなさんスマホでゲームしていますね。

・ペットフード・動物病院代▲
 ペットも高齢化が進んでいます。

・レンタカー料金▲
  車を持たなくなった変わりに、カーシェアが目立つようになりました。

・こづかい(使途不明)▼
 毎年金額が下がる一方で世のお父さんは大変です。景気回復はどこへやら・・・。


以上、食品をメインにピックアップして個人的見解をまとめてみましたが、消費支出に影響するキーワードは 「健康志向」 「料理離れ(手間いらず)」 「個々の嗜好」というところでしょうか?このデータが時勢を反映しているのは良くわかりますので、もっと厳密に分析すれば新しいキーワードや傾向が隠れていそうです。そこに商機が潜んでいるかも・・・。今後も消費支出のデータには目を光らせておこうと改めて思った次第です。




2015.3.2掲載【過去5年の消費動向】
http://www.sankaico.com/ans/ansclm-38.html

2014.3.4掲載【品目別支出金額から見える消費動向】
http://www.sankaico.com/ans/ansclm-31.html